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ドリルの基礎知識(4)「逃げ面」について

公開日:2021/04/28  更新日:2021/04/28

今回はドリルの刃先を構成する要素、「逃げ面」について解説します。

逃げ面について

ドリルの「逃げ」「逃げ面」とは、ドリルを正面からみたとき刃先から後ろ側に向かって傾斜をつけた面のことをいいます。

ドリルは、回転しながら軸方向に前進(「送り」といいます)することで被削材を切り、切りくずを後方に排出して穴をあけていきます。

ドリルが180°回転(2枚刃の場合)するあいだに、逃げ面で傾斜をつけている量より送りが大きいと刃より後ろ側の面が干渉して切り込んでいくことができなくなり、摩擦によって摩耗します。

しかし、あまり角度をつけすぎると刃先の強度が不足し欠損しやすくなりますから、被削材の性質や加工条件を考慮して設定しなければなりません。

 

逃げ面の定義

逃げ面形状

逃げ面の形状としては大まかに「平面逃げ」と「円錐逃げ」の2つに分類されます。

「平面逃げ」

「平面逃げ」は、刃先側の「2番逃げ面」と「3番逃げ面」で構成されます。形状設定によっては3番逃げ面の後ろ側が “高くなる” 場合があり、その場合「4番逃げ面」をつけることもあります。

メリットとしては中心部付近での逃げ角を確保しやすいことが挙げられます。デメリットは「円錐逃げ」と比較して刃先の強度が若干弱くなります。

 

「円錐逃げ」

「円錐逃げ」は、刃先から後ろまでを1つの曲面で構成されます。「円錐」とありますが、厳密な意味では円錐ではなく、円錐の頂点位置をずらしながら傾斜を確保する曲面をつくります。

メリットは、「平面逃げ」よりも若干、刃先強度があることと、面取りやセンタードリルなど、被削材の加工形状を重要視する場合に、安定した加工形状を得やすいことです。デメリットは、中心部付近での逃げ角を確保しにくいことです。

 

逃げ角

逃げ角の定義は一般的には「平面逃げ」と「円錐逃げ」で若干異なります。

「平面逃げ角」

「平面逃げ」での逃げ角の定義は、まず刃が平行な状態で、先端角分倒した面を基準として、そこから後ろ側に傾斜している角度です。

上記のように逃げ角を定義しているので、先端角、逃げ角、シンニングの設定によっては、実際の垂直状態で3番逃げの後ろ側が前側より高くなることがあり、その場合は、後ろが高くならないよう「4番逃げ」で干渉を防ぎます。

 

「円錐逃げ角」

「円錐逃げ」の場合、逃げ角の定義はとてもあいまいな部分がありこれが正解というものはありませんが、一般的には外周部での軸方向での後ろに向けて下がっている量(角度)となると思います。

万能工具研削盤やグラインダーで研磨する場合は最初に刃先を当てる角度(砥石に対してドリルを傾ける角度)を定義していることもあります。

 

チゼルエッジについて

「チゼルエッジ」とは、両刃の逃げ面によって中心部(溝がない部分)に構成される稜線です。

この部分には切れ刃は作られず、穴あけ時には、ただ単に被削材を「こじる」ような作用をしています。

刃の平行と、この「チゼルエッジ」との角度を「チゼルエッジ角」といい、先端角と逃げ角によって角度は変化します。

なぜチゼルエッジ角について解説しているかというと、シンニングの設定と大きな関係があり、設定によってはシンニング部に切れ刃が構成されず、望まれる結果が得られない事がある為です。

 

一般的な設定

一般的な設定については下の表を参考にしてください。

タイプ設定値
ハイスドリル(平面)2番逃げ角 3°
3番逃げ角 20°~25°
ハイスドリル(円錐)2番逃げ角 8°
直線刃超硬ドリル(平面)2番逃げ角 10°
3番逃げ角 20°
直線刃超硬ドリル(円錐)2番逃げ角 8°~10°
波型刃超硬ドリル(平面)2番逃げ角 10°
3番逃げ角 25°
波型刃超硬ドリル(円錐)2番逃げ角 8°~10°

 

ドリルの逃げ面についての解説は以上です。

 

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